人になにかを言われると、大事なものを簡単に手放してしまう。
大事なものをとりかえすには、思い出さなければいけない。
自分自身が何を一番大事にして生きているのか。
彼と一緒にスペインへと旅立った。
お金がなくても人にお願いしたり頼ったりしない旅をした。
逃げ道をなくして、見えてきたものは別世界だった。
空港をぬけるため、クラクションを鳴らされながら高速道路を駆け抜けた。
泊まる場所がなければ、石がゴロゴロ転がった空き地で眠った。
お腹がすけば、ゴミ箱を漁った。
着いてすぐに起きたら荷物も靴も盗られていた。
「お金はおいていこう」といった彼は、いつも励ましてくれた。
「だれかに助けを求めるのは簡単。
自分達でなんとかしよう。
だれかに頼ったら、面白くなくなる。」
「靴も帽子もなくても大丈夫。作ればいいんやから。」
「必要なものは、歯ブラシと歯磨き粉くらいやったな。」
日本に帰ってきて真っ黒になった心は、なかなか白くはならない。
彼は、ますます白さに磨きをかけている。
一番大事なのは、彼と一緒にいることだ。
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